2006年 09月 11日
イラガの繭といえば冬の自然観察の定番。その製作過程は写真などで間接的に見てはいたが、実際に見てみたいと思っていた。あのトゲトゲ毛虫がどう変身するのかはこの眼で見たいと思う。ところがこれまでその機会はないままであった。これがたとえばヒメクロイラガであれば、火山の入り口に数本あるカキの木に毎年集中発生していて見るのはたやすい(こっちの幼虫は枝先でなく地面に降りて繭をつむぐから逆に見にくいのだけれど)。が、ことイラガとなると分布はポツリポツリ。つく植物もさまざま。幼虫段階で探すとなると逆にポイントが絞りにくい。 今シーズンこそは見たいなあと気をつけて探していると、大田切の林のクヌギとサクラからようやく見つかり、昨日になってようやくその繭つくりの一部始終につきあうことができた。いかにも弱々しそうな細い糸のネットに、あの固そうなトゲ突起のついたボディが入っていくと、あら不思議、ネットはやぶれることもなく、トゲトゲはなめらかな楕円体に沿うように折り畳まれていくのであった。 実際に見て気がついたこと、とりあえず二つ。 一つは繭を作り始める前の重要らしいステップが一つあるということ。イラガ幼虫は糸を吐く前に、その楕円体のお尻が接するであろうあたりの表皮を削り取る。それは45分間をかけたかなり熱心なもので、削りカスの粉が下にたくさん散らばるほどだったが、その後すぐに繭作りにとりかかったために、そこがどのくらいなめらかになったのかはよく見えずじまいであった。 もう一つは画像からも読みとれると思うのだけれど、できたての繭には、ちゃんと支えというか、周囲に張った糸が残っているのだということ。ガの繭といえば糸を織り合わせてつくられていて、多少なりともその糸が見えるからこそガの繭っぽく見えるわけだが、冬に見るイラガ繭はコロンとした固い楕円体のみが枝に張りついてあって、そこが繭らしくない部分でもある。ちょっと考えればわかることだが、いきなりきれいな楕円形に糸を張れるわけもないわけで、そういうわけで、できたばかりの繭にはちゃんとあちこちに糸が残っているのだ、と今日はじめて気がついた次第。
by narwhal2
| 2006-09-11 18:00
| チョウ目
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