2006年 12月 15日
飯田美博のシカタ氏のところへおじゃまする。主な目的は美博所蔵のいくつかの標本を撮影させていただくため。 撮影の合間にというか、ついでというか、いやむしろこっちがホットだったのだが、フユシャクのお勉強をさせてもらう。ガ屋であるシカタ氏なので、この機会にちょっとでも識別できるようになれればという心づもり。同定用に標本としてとっておいたフユシャクたちを見てもらいつつ、種類を教えてもらう。 もっとも気になっていたのは、オオナミフユナミシャクとコナミフユナミシャクの識別。少し前までナミスジフユナミシャクとされていたが二つに分かれたという2種で、どうも見るべきポイントがわからず、これまでナミスジでごまかしてきていたのだ。 「みなオオナミだと思います」 ととりあえずの結論。 「一つには、県内でもコナミはほとんどいなくてオオナミばかりということがあります。もちろん見ていけばいるとは思いますけど。千人塚ではオオナミしか見たことがないです。コナミはオオナミより小さめです」 後に文献の図版や実物標本を見せてもらったのだけれど、比べればたしかにコナミはオオナミより小さめではある。が、これも実物を横に並べてみくらべれば、というハナシだ。単独で見ている分にはどっちはわからなさそう。 「オスは触角で識別できることになってます」 これは両者の触角を顕微鏡でのぞかせてもらって、たしかにこれは違う、とわかる違いであった。つまりは千人塚をはじめとしてこのあたりにいるのは、まあたいていオオナミの方であって、こぶりなものがいたら注意して、その際は触角で確認すべし、である。このオオナミコナミ問題の理解が進んだのはちょっとうれしい。 その他、持っていった標本の中で種類が合ってたのは、イチモジフユナミシャク、シロオビフユシャク、クロスジフユエダシャクあたり。まあこのあたりは他とあまり似てないからわかりやすいのだけれど。 ややこしそうだったのは、ウスバフユシャク周辺。ウスバと思っていた標本の大体は合っていたのだが、中にウスモンという種類が混じっていた。てっきりウスバのかすれたものくらいにしか思っていなかったのだ。このあたりは数を見ていくしかなさそう。 このあたりまでが僕がしばしば通ってる千人塚のフユシャクの常連たちで、伊那谷に範囲を広げてフユシャクの面子を聞けば、まだまだお目にかかってないものの方が多いことがわかった。フユシャクの世界はまだ広い。 それにしても、あたりまえだが学芸員シカタ氏の標本は整然としている。ドイツ箱に何十匹もが同じポーズで整列している。比べるのも失礼だが、あるものは針を刺しただけだったり、あるものは紙に包んだままで、数匹があちこちに、という僕の標本とは大違いである。知りたくなったので聞いてみる。 「展翅するの好き?」 「好きですね」 「並べるのも好き?」 「好きですね。並べていくと違いが見えてきますから」 フユシャクにかぎった話ではないが、種の違いは外部形態にカチっと目に見えやすいものばかりとはかぎらない。個体変異だってある。数を見て、集め、そういう過程を通って違いが見えるようになってくる……んだよなあとあらためて思った次第。 *画像は途中に行きに立ち寄った千人塚の今日の住人たち。左上からオオナミフユナミシャク、オオナミフユナミシャク(メス)、ウスバ?フユシャク(教えてもらったばかりだが画像を見たらさっそく迷う……)、シロオビフユシャク。 →冬尺蛾(その14)
by narwhal2
| 2006-12-15 20:45
| チョウ目
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