2006年 12月 25日
東伊那の田んぼを歩く。水モノにあまり接してこなかった関係で、田んぼの生きものにはうとく、田んぼまわりの越冬昆虫もあまり見つけてなかったので探してみようと思ったのだ。 空は快晴。となれば、日差しはあっても風は冷たく、となるのがこの季節の常だが、風はピタリととまり、日差しはあたたかく、そのうちにジャケットをぬぐまでになった。 田んぼわきの石の裏からヒトリガの仲間幼虫、ザトウムシ幼体、ノハラナメクジなどを見、さらにものはためしとのぞきこんだ水路の泥底にタイコウチ成虫(画像)なども発見し、越冬昆虫探しはそれなりに順調。やっぱり場所とねらいを決めてジックリみることがこの季節は大事だなあ……などと思いつつ歩いていると、田んぼの畦にヒラヒラと舞うチョウの姿が目に入った。 エッ?と不意をつかれる。 すぐに我にかえって追跡開始。件のチョウはかなり活動的かつ敏感で、ちょっと飛んでは畦に止まり、しばらくするとまた移動、をくりかえしている。何とか近づいてみればヒメアカタテハ。畦を見ればオオイヌノフグリやタンポポ(在来種型である)まで花をつけていて、ヒメアカタテハはそんな花で吸蜜しているのだった。 それにしてもこの時期に成虫が出てきて活動しているってどういうこと?と?マーク消えず。 家に帰ってヒメアカタテハについてもう一度お勉強。ヒメアカタテハは普通種であるし、河川敷のヨモギに巣をこしらえる幼虫の姿はおなじみであった。が越冬態となると、どうだったっけ?である。「蝶類生態図鑑」をひもとくと、たとえば「けっきょく本種には決まった越冬態がなく、それぞれの地域にもっとも適した発育段階で越冬していると思われる」などとある。千葉では最寒期を若齢幼虫でゆっくり過ごして翌春羽化という越冬をするが、長野県泰阜村(うちよりもさらに南だ)では秋からの幼虫が越冬できずにすべて死亡した、という。また千葉でも野外ゲージでの観察では成虫は12月中旬ですべて死亡したという例も紹介されている。 これらのことから考えれば、今日目撃したヒメアカタテハは、最近羽化したものというよりも、秋に羽化したものの生き残りとみるのが妥当じゃなかろうか。巣を見ているヨモギ群落で幼虫のチェックもしてみなければならないだろう。 それにしても12月も終わりという時期である。体感的にも同様だが、今冬前半の奇妙な暖かさはどうやら生きものたちにかなりの影響を与えそうな気がする。
by narwhal2
| 2006-12-25 17:33
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