2007年 04月 10日
特定の期間にしか出現しないという昆虫は多い。というかほとんどの昆虫は成虫発生期が限定されているといった方がいいかもしれない。春に成虫が出現する昆虫は、へたすれば一年に一回こっきりの出会いである。これはたとえば10年そのつもりになっていても10回しか会えず、人生が奇跡的に残りあと30年くらいあるとしてももうあと30回くらいしか会えない、ということなのだ。 そういえば以前見た17年ゼミの番組で、研究者が案内役だったのだが、その研究者はもうおジイさんと呼んでよさそうなお年の方であった。ところが相手が相手だけに、長年研究をしてきているこの方でも実際にはまだ数回しか観察したことがない、というのを聞いて、うーんとうなったものだった。 さらに、その生きものに毎年ちゃんと会えるかどうかということだってある。出現するポイントが定まらないものもいるし、それまであたりまえのように生息していたのが、いつの間にか絶滅してお目にかかれなくなったという例だって、歴史にたくさん残っているとおり。 生きものとの出会いは、それがおなじみさんであったとしても、それでも毎年がドキドキものなのであって、うん、そんな新鮮な出会い方をしていきたいなあと、久しぶりにヒメツチハンミョウを探しつつ横川の林道歩きをしていて、そんなことを考えていた。 考えてみれば、ツチハンミョウなんていうグループはハナバチに対する寄生者であって、綱渡り的な生活を営んでおり、その消長が大きく変動することは十分に考えられる。しかるにここは、毎年のようにちゃんとヒメツチハンミョウがワラワラと出現してくるイイ林道なのである。もちろん出会うまでは、今年もホントに出て来てくれるかなあととても不安なのであるが……。 しかし心配はとるに足らず、フキノトウやアブラチャンといったまだ春浅い季節のこの林道で、今年もヒメツチハンミョウたちは健在であった。林道のあちこちでその姿を見たが、例によって標高1280m付近の林道カーブポイントにその姿が多いことも例年通り。昨年の大雨災害の影響は深刻で、林道が数カ所に渡って崩壊していたのでアプローチがより困難になってしまったけれど、今年もときどきウォッチングに来たいと思う。見えてないことが多いけれど、幼虫の姿を現場でたしかめることがとりあえずの目標か。 なにはともあれ、オスの触角半ばに備わっている妙な形のふくらみが、求愛行動においてメスの触角をグローブのようにピッタリと把握しているのを見れば、ああ、今年もヒメツチハンミョウに出会うことができた、とホッとするのであった。 →ヒメツチハンミョウ(その5)
by narwhal2
| 2007-04-10 20:14
| コウチュウ目
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