2005年 02月 09日
気になっている虫がいた。コマダラウスバカゲロウの幼虫。その姿はツノトンボ幼虫と同じくアリジゴク型だが、このかわりものはすりばち状の巣穴をつくらぬばかりか地上にさえくらしていない。地衣類の繁茂した岩にへばりついてエモノが通りかかるのをひたすら待つというスタイル。以前地衣類におおわれたスギの幹で出会ってからすっかりファンになっている。
最近これが気になったのは、先日ツノトンボのことを調べようと、松良俊明「砂の魔術師アリジゴク」(中公新書)を手にとったことによる。この幼虫の体には周囲と同じ地衣類が付着していて絶妙なカモフラージュになっているのだが、この点にかかわって、 「背中に生やした地衣類は、同じところにずっといるため(二年間も動かずにいたという観察例もある)、周囲の地衣類の胞子が背中に付着し成長したものと考えられるが……」 とあったのだ。本ではこの後、幼虫自身が地衣類をつけるのかもしれないという話になるのだが、僕が気になったのは、二年間も動かなかった例があるというところで、じゃあひょっとして冬の今も相変わらず岩にへばりついたまま過ごしているということ?との疑問がわいたのだった。 めぼしい成果の上がらない越冬昆虫探索を切り上げ、大田切の林へ。ここは川沿いということもあってあちこちに岩がゴロゴロしており、しかもその表面にはコケ、地衣類が付着している。コマダラウスバカゲロウならここかなと目星をつけておいたポイント。 一時間ほども見て回っただろうか、ようやくその姿が視界に入ってきた。一匹は体長8ミリほど、もう一匹は体長5ミリほどと小さい。そして二匹とも岩のふもとに身を隠すというわけでもなく、地上30センチあたりのところにへばりついていた。 頭部付近をよく見れば、二匹ともその大アゴを180度開けたポーズ。つまり今もエモノが通りかかるのを待ちつづけている体勢とみていいだろう。一体今ごろ何かやってくることがあるのだろうか。暖かった今日は日だまりの岩表面には小さなクモが数匹出てきていたけれど、そのあたりがもしかしたらかかってくれるのかもしれない。しかしそのチャンスはきわめて少なそう。この二匹の幼虫はしばらくしてからまた見てみることにしよう。そのとき位置は変わっているだろうか。 岩の上にも三年、という言い方がある。この幼虫が成虫になるまで実際のところ何年かかるのか調べていないが、まさにそういった表現がピッタリの、ひたすらジッと待ちつづけるタイプのハンターだなあ。
by narwhal2
| 2005-02-09 20:00
| アミメカゲロウ目
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