2005年 02月 18日
昨日中平の段丘沿いを歩いたときに小さな洞穴を見つけた。今日はライトを用意してそこに入ってみることにした。入り口はやっと体が入るくらいだが、その先はかがんで通れるくらいのきれいな横穴が10メートルほどもつづいている。固い岩盤を人が掘りぬいたもので、防空壕跡ではないかと思われた。 このくらいちゃんとした穴ならコウモリでも越冬してないかしらと期待していたのだけれどその姿はなし。壁にあらわれたのは廃水路でもおなじみだったマダラカマドウマばかり。これがあちこちにはりつく。奥の方にはユスリカと思われる虫が、暖かく感じるくらいだったからだろうか、羽音が耳に聞こえてくるくらい多数飛び回っていた。そして、成虫越冬する10頭を数えたヤガの仲間とおぼしきガたち。毛におおわれたその体には湿気がきれいな水滴になってたくさん付着している。 種類を調べるためにそのガを一匹連れ帰る。しばし図鑑とにらめっこ。プライヤキリバと判明。さらにいくつか調べてみれば、このガがなかなか興味深い存在であることに気がついた。 生活史について簡潔でわかりやすかったのは、三重県科学技術振興センター林業研究部というところがサイトで公開している情報誌「森のたより」第164号の中の「コウモリが森を守る?−洞穴性コウモリによるプライヤキリバの捕食−」という記事だった。内容は、洞穴にはプライヤキリバ数千頭分の残骸が落ちていることがあり、コウモリがこのガを大量に捕食している、というもの。このガの幼虫はアラカシやウバメガシを丸裸にするほどの害虫として知られており、コウモリがそれを捕食していることでその害が軽減されているのだろうという。 ガの方の生活史だが、食草はブナ科の樹木。成虫は春に産卵し、卵からかえった幼虫は成長し夏には羽化する。ところが新成虫はその後洞穴に入り込んで夏眠してしまう。秋、その一部は出てくるが、多くがそのまま洞穴の中で越冬し、翌春を迎えるという。つまりこのプライヤキリバは成虫期のほとんどを洞穴でのみ過しているガなのだ。過ごしているといっても今日見たようにジッとただへばりついているだけだ。人を基準に見るのはおかしなことと承知ながら、虫の生涯とはやはり変テコだなあと思ってしまう。せっかく成虫までたどり着きながら、夏秋冬と三つの季節をジッと穴ぐらで待機する一生なのだから。 ただまわりを見渡してみれば、一年に一回、季節限定出現の虫とは、多かれ少なかれこのような生活史なのかもしれない。ミドリシジミ類は一年のほとんどを卵の状態ですごしている。さらにいえば、セミ類だって地上にあらわれるのは生殖、繁殖のためであって、その他はずっと地下にいる。やっぱり何かしらの点でかなり限定して生きているものが多いのね……。
by narwhal2
| 2005-02-18 20:34
| チョウ目
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