2005年 01月 04日
妙に冷え込みのゆるくなった午後、散歩に出る。雪も融けだしてよかろうと思ったのだが、日陰にはしっかりと残っているし、融けだしたところは逆にビシャビシャ。コンディション悪くなかなかこれといったものに出会わない。古田切の谷の竹林で見つけたキボシアシナガバチのきれいな古巣が唯一の収穫。 谷から上がって段丘面沿いの集落を行く。道に少しのびたウメの枝にイラガのマユあり。さらにいくとこれまた工場の敷地から道に張り出したサクラの枝にもイラガのマユ。 この冬はイラガのマユを集めてみたい、そう思っていた。イラガというガは、冬のマユとその前の終令幼虫くらいしか見てこなかったことが一つ。もう一つはこのイラガに寄生するハチ、イラガイツツバセイボウにお目にかかりたいと思ったからだった。 この両者の攻防については岩田久仁雄さんの「自然観察者の手記」(朝日新聞社)に紹介されている。イラガの越冬マユに穴をうがち産卵寄生するイラガイツツバセイボウはもともと日本にいたハチではなく、明治末から大正初に中国からやってきた帰化昆虫だ。1914年に日本で最初に記録されるが、1940年代から一気に定着する。たとえば岩田さんは香川において1948年からの2年間に2580個の越冬繭を集め、その中の956個にこのセイボウが寄生していた、という。イラガの繭の実に半数近くが寄生されていたわけだ。とともにこの章を読んでいて驚いたのは、何よりイラガの繭を2500個も集めることができたということだった。岩田さんの調査能力がきわめて優れていたということを仮に差し引いたとしても、以前はそれほどたくさんイラガがいたということなのだろうか。 移り気自然観察者の僕は、何かのついでにイラガの繭を探しているだけで、しかもその気分も忘れてしまったりするくらいだから、この冬に入ってもまだ10数個くらいしかその越冬マユを見つけていない。そしてイラガイツツバセイボウの産卵跡(マユに1ミリほどの穴をかじり開け、産卵後、かじりカスをだ液とまぜて穴埋めするので跡が残るのだという)のついたものはまだ見つけていない。
by narwhal2
| 2005-01-04 18:13
| チョウ目
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