2005年 07月 02日
先日、トノサマバッタ(まだ確認できているわけではないが)幼虫をもとめて中平の河川敷をうろついていたときのこと。低い草がまばらな堤防で、小さなバッタ幼虫を探すために、一歩ずつ足を踏み出し、そこから飛び立つものを目で追っていた。トノサマやショウリョウらしき幼虫とともにときどきはねるのはヒシバッタ。ヒシバッタこそバッタの中でも近しい仲間であるにもかかわらず、そういえばじっくり見たことはなかったなと思い、この小さい頃の遊び相手のバッタをしばし追いかけることにした。 ヒシバッタについて思い出されたのは、多くの種類があって区別が難しそうなこと、同じ種類でも色彩変異が大きいことなどだった。じゃあとりあえず僕が見て「ヒシバッタだ」と思うものを集めて並べてみようと思い立つ。 ヒシバッタをつかまえるのにはじめは難儀する。そのつもりなくとも「ああ、ヒシバッタね」とお目にかかる存在のはずが、いざつかまえようとするとなかなかうまくいかない。小さいとはいえジャンプ力があるから手づかみしようとしても「ピンッ!」と跳ねて逃げられる。しょうがないので、よれよれの捕虫網の網の部分だけを持ち出し、エイヤッとかぶせたものの、相手は小さく地味で、網越しになるとどこにいるのかわからなくなってしまう。何度も取り逃がしつつ、20匹ほどのモデルがようやく集まった(今日の画像は個別に撮った後に合成している)。 「セミ・バッタ」(保育社)には、本州産のヒシバッタが7種紹介されている。このうちトゲヒシバッタ、ニセハネナガヒシバッタ、ハネナガヒシバッタは体が細長かったりして明らかに形態が異なっている。残り4種のうち、ノセヒシバッタは関西地方の分布だからこれものぞいてもいいだろう。 コバネヒシバッタは無翅というのが一つの特徴のようだ。そこでつかまえたのをルーペでのぞいたら、それなりにちゃんとした細長い後翅と小さな痕跡的前翅が見えた。ヒシバッタにもちゃんと翅があるのね。この点で、翅の長さが腹部の中程にも達しないモリヒシバッタでもなさそう。つまりこの図鑑の中であてはめるならヒシバッタというヒシバッタだ。これらがすべてヒシバッタ1種だとするとその色彩バリエーションは相当なものになる。何も知らずに見たら種類分けしたくなってしまう。もちろん、この図鑑に掲載されていない種もあるだろうから、数種混じっている可能性もあるが、狭い範囲で集めたものたちだし、同じ種と考えるのが素直な見方じゃなかろうか。 さらに驚いたのは、ヒシバッタ探索中に見つけた(と思った)変わり者。現場ではこれがハネナガヒシバッタという種類なのではないかと勘違いしたのだけれど、図鑑の写真と見比べたのだけれどこれがまったく違う。じゃあ何者?とさらに見ていったら、ヒシバッタの中に長翅型があらわれるらしい記述を見つけた。図版がないので決め手に欠くが、どうやらこれではないかと思われた。色彩だけでなくこういうバリエーションもあるのだね。 ヒシバッタ科の解説には「ふつう湿性の地表を好み、コケや落ち葉を食べる」などともある。変異性だけでなく暮らしぶりも気になるところ。ヒシバッタ。奥が深い。
by narwhal2
| 2005-07-02 17:50
| バッタ目
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