2006年 06月 10日
バタバタしているうちに5月が終わり、気がつくと長野県も梅雨入りしてしまった。ここのところ何かと立て込んでいて、気ままなフィールド歩きという感じの時間がなかなかとれていない。あてもなく歩きつつアンテナに引っかかってくる相手とつきあう……のがスタイルのはずなのにこれではいかんと、今日の午後、少しだけ火山を歩く。 ハギの若葉にハギルリオトシブミを見つけ、その下にはいつくばって数ミリ大のタワラ型揺藍を拾ったり、同じくハギの葉をなかなかいい模様に食べ進むゾウムシを見たり、いつの間にか濃くなってきた田んぼ周りの雑木をながめたり、何かを目的にするんじゃなく、そのときその場所で出会える相手を楽しみながら歩く。こういうフラフラ歩きがやっぱりいいなあとあらためて思う。 さて、今日アンテナにひっかかったのは、コナラ葉裏にぶら下がっていた代物。何となくミノムシを連想させるいかにも何かの幼虫の住まい。しかし形態は細長いラッパ型。触ってみると固くなくてかなり柔軟。材質は細かい粒々でできており、おそらく中の住人のフンがひたすらつなぎあわされたものではないかと思われた。フンをつづったケースだ。そしてもう一つ気がついたのは、このケースの付着した葉の下の方が食べられていること。どうやらケースから身を乗り出して葉を食べているんじゃないかという感じ。 うちに葉ごと連れ帰り、机の片隅におきしばし見ていると、件の幼虫が姿をあらわした。そうぞうしていたようなスタイルで頭胸部あたりをせりだして葉をかじっている。 念のため、と手持ちの「原色日本蛾類幼虫図鑑」をめくると、それっぽいケースの写真に行き当たる。ツマグロフトメイガというメイガの幼虫。「幼虫は糞を綴ってハンモック状の巣を作り、その中に棲んで葉裏より食害する」とある。フンハンモックをつくり暮らすガの幼虫なのだ。 なるほどな、と思ったのは、このケースの柔軟性のもつ意味。ミノガ幼虫はケース毎移動していくわけだけれど、こちらの幼虫のフンハンモックケースは尾端部分が葉に固着している。そこで幼虫はケースを左右に曲げ、あるいは少し伸ばすことによって、身をそれほどむき出しにすることなく葉のいろんな部分をかじることができるわけだ。このケースも、フンを一つひとつ継ぎ足していったことをあわせて考えると、かなりすばらしい作品だよなあと思えてくる。
by narwhal2
| 2006-06-10 20:25
| チョウ目
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