2006年 12月 13日
晴れもせず、かといって雪になるわけでもないという感じで天気もよろしくない日がつづき、標本たちとつきあっている。ここ数日は抜け殻。以前その一部を紹介したあともこのビンテージあつめは細々とつづけ、そんなコレクションをしていると聞いた知人が送ってくれたりして、そのバリエーションも少しずつ増えてきた。 虫のグループによってもその抜け殻のありようはだいぶ異なっていて、おおまかには完全変態と不完全変態で大きく違う。 完全……の方は幼虫がイモムシ型で、そこから蛹、羽化という過程になる。だからぬけがらもクシャクシャになったイモムシ皮+蛹殻となる。少々見た目の面白みにはかける。その点、直翅類など不完全……の方はいかにも成長にあわせて脱いでいったといったぬけがらになって、並べたときに楽しい。 以前にも書いたが、ぬけがらとは虫の骨格標本である。骨格標本というとセキツイ動物のものをイメージしがちだが、虫は外骨格というくらいなのだからぬけがらは正しく骨格標本なのである。 画像のナナフシモドキは幼虫期が6齢だから、脱ぐぬけがらも6つを残す。一匹のナナフシモドキが生きたあとには骨格標本が6つ残るのである。それらは大きさがだんだん大きくなる相似形だから、いかにも一つずつぬいで大きくなった、という感じがするしろものなので、お気に入りの一つ。もっともナナフシモドキは脱皮の後に、そのぬけがらを一部を残して食べてしまう習性があるので、まともなぬけがらを手に入れようとするならば、その兆候を見逃さず、脱皮直後にぬけがらをちょうだいするというあらわざを使わねばならない……。 ぬけがらでは今年も課題が残っている。いくつか見つけられなかったぬけがらがある。去年から課題だったのだけれど、ここらに生息しているセミのうち、チッチ、アカエゾ、コエゾの3種ぬけがらにまだお目にかかれていない。チッチなど近くの林で鳴いていていることがわかってるのに見つけることができない。このあたりはまた来年に持ち越しだなあ。 →ビンテージコレクター(その2) 【機材工作話】 以下、機材工作話になります、です。ネタに乏しい日がつづきそうなので。そういった方面に関心ある方だって訪れる方の中にはいらっしゃるかもしれぬ。かくいう僕も今回の機材工作にあたってはネット上の情報に助けられたのであって、その情報をネットにお返ししておかないと、ね。 閑話休題、それがなければ撮れない写真というものがある。写真のことをご存知でなければ「そんなことがどうしてできないの?」となるだろうが、今日の「ナナフシモドキぬけがら一覧」のような奥行きのある平面を斜め俯瞰から撮る写真というものもその類いである。 それらしくごまかしたり、あるいは後に合成してつくるという方法もあるにはあるが、こういうのをまともに撮ろうとするならばアオリという操作が必須となる。 アオリといえば中・大判カメラの世界であって、あるいは35ミリカメラであってもキャノンとニコンが専門のレンズを出しているわけだけれど、これらを日常的に使うであろう広告写真家ならいざしらず、僕のようにそんなのたまにしか使わんなあ、という人にとってはかなり高価で二の足を踏むレンズなのだ。 ところが調べてみると、イメージサークルの大きなレンズとアオリ操作のできるベローズさえあれば同様の機能が手に入る、とわかった。 レンズは懐かしの引伸しレンズが使えるらしい。中古カメラ屋に問い合わせたら「何本欲しいの?」というほどあるという。暗室が絶滅危惧種であろうからレンズもたくさん出てきているわけだ(そのかわり新品はもうない)。別に何本もいらないので、程度がいいというEL-Nikkor 80mmを一本注文。10500円なり。 問題はベローズ。ニコンはかつてPB-4というアオリのきくベローズを出していたが現行品ではなく、しかも同じようなことを考える人がいらっしゃるらしく、オークションなどみてもかなり高値がついている。機材ケースをあされば、スクリュー部分をちょっとなめてしまったごく普通のベローズPB-6が転がっている。もともとこういう工作は好きな方であり、昆虫の写真など撮ろうとすると小さな機材の改造などは日常茶飯事に行わなければならないなのであって、ここは一発やってみるか、となった。 ちょっとずつ時間を見つけては、PB-6のレンズボードを金ノコで切り、アングルを組み合わせ、レンズネジにあうアダプターにネジ穴を開け……とカットアンドトライをくりかえしできあがったのが上画像のアオリシステム。ちなみに袋蛇腹にしているのはダークバックを切って縫い合わせたものだが、これもレンズ同様暗室時代の残り物だというところがちょっとノスタルジック。 習うより慣れよとばかりに、あれこれ操作しているうちにはじめてのアオリ操作もすぐにコツがつかめてくる。細かなピントあわせなど、撮ってその場で確認できるデジタルなのだから納得いくまでトライして一つずつたしかめていけばいいのだ。 操作性はほどほどなので、野外に持ち出したり、動く生きものに使う気にはならないが、室内でゆっくりセッティングできる条件なら問題なし。シフト量は少ないのでほとんど関係ないが、アオリはちゃんときかせられる。何より、使わなくなって久しいベローズとしばらく見てもいない引き伸ばしレンズ+コツコツ工作で、新しい機能が一つ増えたのだから、うん、十分だ。
by narwhal2
| 2006-12-13 15:46
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