2007年 05月 11日
気分を変えて、春の冬虫夏草でも探してみようと横川まで出かけていったのだが、見事に空振り。すごすごと引き上げる途上、代掻き中の田んぼがあった。車を止めしばしながめる。 実はこのところケラが気になっていた。きっかけはミイデラゴミムシ。ミイデラの幼虫はケラの卵で育つとされていて、その流れで、ではケラ探してみっかと思い立ったのだが、それが思ったよりも簡単ではなかった。 ケラ、いやオケラといった方が一般には通りがいいだろうが、かなり知られた昆虫ではある。声なら家のすぐ近くだって聞く。見たこともある。だからその気になれば見つけられるくらいには知ってるつもりだった。 田んぼまわりの湿気た土の中というイメージはあったのだけれど、畦を掘り起こして回るわけにもいかず、田んぼをながめていても見つかることもなく、めったに人の来ない休耕田をちょびっと掘り返してみたりもしたのだがサッパリ。 先日イボタガを届けてくれたシカタ氏ともそういう話になっていた。 「丸一日でケラいっぱい捕ってこいっていわれてもこまっちゃうでしょうね」 「代掻きのときに出てくるっていうけど、水生昆虫じゃないんだから底の泥にいるわけじゃないよね」 「代掻きって何回かするんですよ。水を入れて最初の代掻きのときにケラ出てきます。でもムクドリとの競争になると思いますよ」 今日ここの田んぼで車を止めたのは、その一回目の代掻き状態だったからだった。しばらくながめていたら、畦近くを泳ぐ姿が見えた。 スワッと走りよればまさしくケラ。少し離れたところにもう一匹。しばらくするともう一匹。思ったよりもゆっくりと岸に向かって泳いでくる。おお、いるじゃん。 「ケラを探してるんですけど、見てていいですか」 「昔はいっぱいいたけど、今はあんまりいないよ」 ムクドリのごとく(そういえば来てなかったなあ)後をついてまわる。結局田んぼ一枚代掻きする間に目にしたのは20-30匹くらいだっただろうか。道を挟んで向こうの田んぼも一回目の代掻きだったが、なぜかこっちでは見かけない。うーん、多い田んぼと少ない田んぼがやっぱりあるのね。違いはなんだろう。 カメラもって畦を何周もうろうろしてときどきのぞきこんだりしてるから、よそのお百姓さんも入れ替わりやってきてオケラ・クエスチョン。 「オケラっていうのは大きくなったら何になるの?」(二人の人から同じこと聞かれた) 「じゃあもうこれ以上は大きくなんないのか?」 「オケラっちゅうのは何の仲間なんだい?」 「エッ?オケラって飛ぶの!?」 「オケラは卵産むの?」 「オケラはやっぱり害になるのかい?」 「これは日本にしかいないの?」 ……けっこう面白い。お百姓さんたちにとっても知ってるつもりの虫なのかも。 今日ようやくまともにご対面した僕にもたくさんのクエスチョンが浮かんだ。 まず初歩的かつ実用的クエスチョン。オスとメスはどこで見分けるんだ?そんなもの産卵管で見りゃいいでしょうがといわれそうだが、ケラの産卵管は目立たずわかりにくいのだ。体が大きくお腹がふくらみ気味なのがメスなんだろうなあとは思うのだが、決め手に欠ける。 調べていくと前翅の翅脈の違いで区別できるらしいとわかる。見るがどこがちがいなのかハッキリしない。くわえてケラはストレスに弱く死にやすいなんて聞くとあまり長時間いじってもいられない。で、手早く翅だけを撮影し画面上で並べてみた。ようやく二つに分けられる。同じところで引っかかる方がいらっしゃるやもしれないので、参考までに。以下、左二つメス右二つオスと思われます。 次なる疑問は生活史のこと。今日田んぼでは成虫も幼虫も泳いでいたのだ。割合的には1:2くらいの感じで幼虫の方が多かったが、今の時期に両方見たことで、じゃあ越冬態はどっちなの?と混乱したのだ。 ダメもとで「昆虫III」(学研生物図鑑)を開いたらちゃんと記述があった。5-7月が産卵期だが、早くかえったものは秋に羽化、成虫越冬で、おそくかえったものは幼虫越冬して翌夏に羽化とのこと。なるほどねえ。 そもそも名前に「お」をつけてもらっているのは、このケラと養蚕盛んだった頃のカイコくらいじゃなかろうか。それほどに名前と姿は知られているケラ。カイコは飼育されていたからそのくらしぶりはよく知られている。しかしケラとなるとどうだろう。ケラ、かなりいいところついてる、かも。
by narwhal2
| 2007-05-11 20:20
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