2005年 02月 12日
ハサミムシ寄生?で紹介した謎の円筒形物体。その正体をたしかめるべく、ハサミムシ研究者の上村佳孝さんにヘルプを出していたが、それに対するとても丁寧な返事をいただいた。
僕の大ざっぱ予想はまんざらでもなかったようだ。それはやはりコブハサミムシに寄生するある種のハエ蛹だったのだ。 この寄生バエ、研究者の間ではさすがに既知の存在であるらしく種の記載もされているが、複数種いる可能性もあるという。先日書いた中の前後に突起のついたオレンジ色(後に見るとアズキ色に変化しており、オレンジ色は出現初期の色のようだ)のものの話だ。突起なしのブツに関してはコブハサミムシとは関係ないかもしれない(このナゾは残る)とのことだった。以下は前者の蛹についての話。 上村さんからのメールは内容満載だったのですべてを紹介することはできないが、最も興味をひかれたのは、この寄生バエの寄主がコブハサミムシのメスにほぼ限られている、という点だった。オスに寄生することはほぼ皆無。なぜメスだけにとりついているのか。これとてもナゾ。上村さんおよびこのハエの研究をされていた松尾洋さんによると、この寄生バエはコブハサミムシが若齢幼虫であるころ寄生するのだという。そうすると、寄生バエはその幼虫がオスなのかメスなのか識別して産卵(もしくは幼虫を直接生むなんて方法もあるかもしれない)しているということになる。成虫になればオスメスの区別は外観的にすぐわかるのだけれど、幼虫段階で見分けて寄生しているとなるとその方法はハテナなのだ。 なお、寄生バエに宿られたメスの卵巣は発達しない。これ寄生バエがそうさせているのかどうかは不明だが、だから飼育しているうち未産卵のメスの中からこの蛹が出現したというわけだった。たしかに寄生バエの戦略として考えてみれば、メスには体の割りに大きな数十個という卵を産み出す栄養分があるわけで、それを我が子にすべて与えることができる。しかもメスが翌春まで生存するのに対し、オスは冬の早い時期に死んでしまうことが多い。寄生バエ恐るべし。 今日ハサミムシ飼育ケースを見ると、件の蛹がまた一つ出現している。同じく未産卵のメスからで、突起ありのタイプだ。まだこれがハサミムシの体から出てくる現場を見ることはできていない。幼虫の脱皮殻など見あたらないことから、この蛹の状態でハサミムシの体から出てくるのだろう。それはおそらく尾部から出てくるのだろうが、それは自力?で出てくるのだろうか、それともハサミムシが産卵するように出すのだろうか。ナゾはつきない。 上村さんによると、この寄生バエの羽化時期は初夏のころではないかという。その成虫の姿も見届けたい。 なお、研究成果をこのような場に紹介することをご承諾いただいた上村さん、松尾さん、どうもありがとうございました。 ![]() ■
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by narwhal2
| 2005-02-12 12:03
| ハエ目
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